2014年1月10日金曜日

黒点観測と一連の出来事

最近、太陽の黒点観測に没頭している。というのも、正月から晴天の日が続いたため、毎日連続観測ができているからだ。しかも、連続晴天が始まった後、久しぶりに大きめの黒点が出現したので、その移動の様子が太陽表面の東縁から西縁にかけて、観測漏れ無く、毎日きれいに記録されているのだ。黒点が小さかったり、数が少なかったりしていたら、いくら晴天が続いても面白い観測結果になるとは限らない。また、黒点がたくさん出過ぎても、画像を重ね合わせたときに黒点がダブってしまって綺麗にはならないだろう。今回は、とにかく、綺麗な観測結果が手に入っているので楽しくて仕方がないのだ!

この久しぶりに現れた大きめの黒点観測を楽しんでいたところ、NASAから次のような発表があった。「アンタレスロケットの打ち上げ延期」。なんのことかわからず、最初はそれほど興味を持たなかったが、それが今観測中の太陽黒点と関連があると知って、俄然興味が湧いてきた。

このロケットの打ち上げ延期の原因は、太陽表面に現在ある大型黒点において、1月7日に、2014年最初の大型フレア(「X級」)が爆発し、宇宙空間の放射線レベルが予想以上に上昇したことだ。これほどの高放射線レベルだと、ロケットのエレクトロニクスが破壊される可能性があるというのだ。
1月7日に撮影した大型黒点(1月7日の黒点観測の記事はこちら)
太陽黒点や太陽フレアの活動による、太陽風の変化は「宇宙天気」と呼ばれ、宇宙活動を繰り広げる現代においては必須の情報のひとつになっている。(例えば、SpaceWeather.comというサイトが会社があって、実際に天気予報のサイトと同じように宇宙天気の予報、解説を行っている。)今回の打ち上げ延期は、この宇宙天気の勧告に従ったわけだ。

ところで、アンタレスってなんだろうと思ったので、検索してみた。すると、国際宇宙ステーション(ISS)に物資や機材を補給する「宇宙運輸便」のような民間会社であることがわかった。

現在のISSの船長は若田光一さんで、日本人初の船長ということで話題になったし、アイソン彗星を宇宙から解説するということで、アイソンが接近した師走の初めにはかなり話題になった。その関連で、若田さんがなかなか船長になれず苦労したという特集番組を先月テレビで見た。なんでも「決断力」が弱いと見なされ、なかなか最終試験に合格できなかったというのだ。そこで精神的なトレーニングを彼は何年も積み重ね、ついに船長になれたという内容だった。その若田さんの決断力を問う事件が、アイソン彗星が粉々に砕けた後やってきた。

2013年の12月11日に、ISSの温度を管理する冷却システムが破損し、室内の温度が急上昇、システムは異常を感じて宇宙ステーションの一部の電源を自動的に切ってしまったのだ。バックアップの冷却システムが作動し、生命の危機が脅かされることにはならなかったが、放っておいてこのバックアップが壊れた時は、それこそ緊急脱出しなくてはならない大ピンチとなる。なんとかして、この問題を速やかに解決する必要が生じた。若田さんだけでなく、NASAの地上チームも加わって、問題の原因を解明したところ、冷却システムのポンプのバルブが壊れていることが判明し、このバルブを交換すれば問題は解決するという分析結果が出た。

最初私は、このバルブの交換のための部品を、アンタレスが地球から届けることになっていたのでは、と思ったのだが、さすがはNASA。バルブの予備部品はISSの倉庫に保管してあったのだ!素晴らしい。若田さん、そしてNASAは宇宙飛行士2人を船外活動(スペースウォーク)させ、外部から問題箇所を修理する決断をする。10時間弱の船外作業の結果、システムは見事復旧したのだった。

しかし、スペースウォークの最中に、補給船をドッキングさせるのは危険なので、アンタレスは最初の打ち上げ予定(12月17日)を延期せざるを得なくなってしまった。


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