2013年1月27日日曜日

岩波の雑誌「科学」:ヨーロッパのジャムのセシウム汚染

岩波書店が発行する月刊紙「科学」がこのところおもしろくなっていることを最近知った。その理由は、福島の原発事故以降、関連する話題を取り上げることが多くなったからだ。とりわけ、コラム欄の「放射線測定の現場から」がおもしろい。筆者は駒場の化学者小豆川さん(「あずきがわ」さんではなく、「しょうずがわ」さんとお読みするらしい)。

今年の1月号には、農作物のセシウム検査についての記事が載っている。そこで紹介されていたのが、昨年税関で引っかかったヨーロッパのブルーベリージャム。非常に興味深い。元データは、厚生労働省が発表する「輸入食品などの食品衛生法違反事例」。ホームページがあるので、そこからエクセルファイルの形でダウンロードできる。

まず、2012年4月のデータには、明治屋が輸入した、オーストリア産のブルーベリージャムが3点輸入禁止となっていることが記されている。原因はセシウム汚染。それぞれ、140Bq/kg, 180Bq/kg, 220Bq/kgと高い汚染が見つかったという。次に、2012年7月のデータを見ると、フランス産のブルーベリージャムが1点、セシウムで汚染されていることが判明し、輸入できなくなったとある。汚染度合いは150Bq/kg。これは、三越伊勢丹系列の会社が輸入したもの。

実は、これらの原料ブルーベリーはすべてポーランド産だと注釈にある。ポーランドはチェルノブイリの事故でひどく放射能汚染された国のひとつだ。つまり、このジャムの問題は、30年程前に起きた、チェルノブイリ原発事故によるセシウム汚染が原因だ。それが、いまだに大地や森林を汚染し続け、食品を汚染しているのだ!木の実のジャムと、野生のキノコは、特にセシウムを溜めやすいというのは知っていたが、これほどひどいとは。

数年前にポーランドはEUに加入したので、基本的にEU内の国であれば、どの国がどの国の原料を使って製品を作ろうと、「ユーロランド」つまり「ヨーロッパ」製品と見なされる。(例えば、「日本産」と呼ばれる蕎麦が、京都の食品工場で、岡山で生産された蕎麦粉を使って製造されるような感覚だろう。)

気になるのは、税関でちゃんと止めてくれているのかどうかだ。国内に輸入できたヨーロッパのジャムは全て検査済みで100Bq/kg以下ということなら、一応は「安心」ということになろう(とはいえ、ここで「安全」とは言うまい。なぜなら、100Bq/kg未満の汚染の可能性が残るからだ)。しかし、抜き打ち検査しかやってないとしたら、結構検査をすり抜けて、店頭に並んでしまっている可能性もある。高級デパートや高級スーパーで、ちょっと気取って購入するヨーロッパ産のジャムは、「チェルノブイリ印」がついているかもしれないから、ちょっと気をつけようと思う。

もし、食品検査に興味があるのなら、まずはヨーロッパのジャムに目星をつけたらいいだろう。ちょっと値が張るので、それなりの額の研究費/調査費が必要になるだろうが...

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