2012年10月29日月曜日

日本の土壌汚染地図(とりあえず)

日本列島の「土壌放射能汚染地図」の仮地図をここにまとめておこう。

この夏休みまでの採集結果および、最近見つけた八王子放射能測定室の9月、10月分のデータをお借りして作ってみた。まだ測定していない検体があるので、そのうち更新しようとは思う。

しかし、このバージョンでも東日本の汚染の様子がだいたい浮かび上がっているように見える。これだけの情報でも、大域的な汚染状況が把握できるだろう。

日本の土壌の放射能汚染地図
旗マークは土壌採取はしたが、
放射能測定をまだ行っていないところ。
今のところ調査が足りないのが、宮城より北の東北地方、それに新潟から北の日本海沿岸だ。このあたりは福島に比較的近いから、汚染とは無関係とはいえないはずだ。早急な調査が必要だと思う。

enniethebearさんのご指摘で気付いたのだが、CPSのスペクトルは質量を考慮していないので、検体が少なければピーク高も低くなってしまう。このため、あまり参考にならないことに気付いた。積分のアルゴリズムははっきりしないが、それでも単位質量あたりの放射能(Bq/kg)をそのまま分類に使った方が、今の段階ではより正確と考え、ラベルの色分けは次のように行った。

炎   A++ : 5000 Bq/kg以上
赤に点 A+   : 3000-4999 Bq/kg
赤   A     : 1750-2999 Bq/kg
紫   A-    : 1000-1749 Bq/kg
黄に点 B+   :   750 - 999 Bq/kg
黄   B     :   500 - 749 Bq/kg
青   C     :   200 - 499 Bq/kg
水色  D     :   100 - 199 Bq/kg
緑   N     : ND (ピーク無し)

関東の汚染がよくわかる。また、長野県の東の山々が境となっている様子もよくわかる。とはいえ、軽井沢や御代田、佐久などの山岳地帯には汚染が侵入している。富士山のキノコや、静岡のお茶や松葉が汚染されていることは別のグループの調査でも明らかになっているので、おそらく静岡や山梨にも汚染侵入があると思われる。この確認はこれからの研究課題だ。

フランスの原発でまた事故

石原都知事の辞任のニュースで隠れてしまったが、10月25日にフランスの原発で放射性物質が漏れる事故があった。どの新聞も「大したことはない」と報道しているが、原発が「完全」ではないことがよくわかる。「たいしたことない」ことですら完全にはコントロールできないわけだから、より厳しい問題が発生したときは「おてあげ」になるわけだ。フランスではこのところ事故が相次いでいる。この調子でいくと、次はフランスかもしれない。

原子力発電というのは「失敗がゆるされないもの」だとすると、現在のレベルでは「人間は扱えない」ことになる。

事故を起こしたflamanville原発の位置
実はよくみたら、この原発はジャージー島(英領)の対岸じゃないか!しかも200キロも北にいったらIsle of Wightがある!
事故を起こした原発と英国との関係
ちなみに、半島の付け根にあるCaenという街にはGANILというフランスの核物理研究所がある。

2012年10月19日金曜日

Level Aの汚染地帯:軽井沢の土壌のセシウム汚染

次は軽井沢を見てみる。軽井沢は、昨年から線量計を使って重点的に調べて来たが、いろいろな理由により、土壌を採取してγ線スペクトルをみるという調査がなかなか進んでいなかった。今回は手始めに、離山周辺の山林中の土壌を調べてみた。

まず、地形について述べておこう。採集したのは山の斜面で、その上部は尾根状になっている。この斜面も、その上部の尾根も別荘地になっている。尾根部の比較的平らなところは、本来ならば地面は厚い落葉の層で覆われているのだが、この別荘の主人はそれを徹底的に排除した。つまり「除染」したわけだ。一方、その下の斜面には落葉は残り、クヌギの林となっている。

この場所で線量を測ってみると(DoseRAE2)、尾根部分は一面が0.2μSv/h程度(今年の夏の段階)ある。斜面一帯もおおよそ同じ値だが、一カ所線量が0.35μSv/hと高めになっている場所があった。木の根元部分で、斜面を流れ下った土砂が溜まりやすいのだろう。この場所は線量が高すぎてDoseRAE2の動作が不安定になるので、JB4020によるRAMI解析を行って、0.35μSv/hという結果を得た。

今回のγ線スペクトルは、斜面にある木の根元付近(0.35μSv/hが出た場所)の土のものだ。その結果は次の通り。
軽井沢の土壌のγ線スペクトル
凡そ5200 Bq/kgという値が出たが、CPSのスケールを見ると2倍になっているので、ここのセシウム汚染は「レベルA」、つまり私の定義では2000-3000 Bq/kg相当ということになる。これは、伊達(福島)や東大(本郷)と同じ程度の汚染に相当する。
(追記:この後の考察で、測定質量の規格化が弱いことを考慮すれば、測定器の数値をそのまま信じた方がいいという結論になった。)

スペクトルを重ねて見ると、伊達市のものとほぼ同じ感じだが、軽井沢の方が伊達のものより少し高くなっている。これは、LB2045が算出した放射能の強度、つまりベクレル数と首尾一貫した結果となっている。言い換えれば、除染した軽井沢の別荘地の方が、除染していない福島北部の民家よりもセシウム汚染はひどい、ということだ!この結果は、山林除染の難しさを示していると思った。

レベルAの汚染地帯
おそらく、軽井沢のこの場所では、斜面上部を除染してしまったゆえに、風雨によって汚染された土砂が動きやすくなり、斜面を流れ下ってしまったのだろう。その一部が木の根もとに溜まって、ミニホットスポットのようなところを作り出してしまったと考えられる。

セシウムで汚染された山林は落葉を残すべきだろう。そうすれば、スポンジのように雨を吸収してくれるので、土砂の流出を(ある程度)防いでくれるだろう。結局、除染をしても線量は0.2μSv/hもあったわけだから、山林は除染をしても線量はあまり落ちない上に、斜面の下にミニホットスポットを作り出してしまう恐れがある。

効果の少ない除染に多額の費用を費やすのは無駄ではないだろうか?チェルノブイリのように、山林除染はあきらめるのが論理的だろう。しかしこれは、汚染された山林には300年は入れないということを意味する。原発事故というのはこういうものだということを、心に刻まないといけない。

最近、除染を加速するよう指示を出した総理大臣は、こういうことをちゃんと理解していないのではないか?(ましてや、処分場も決まらないうちに、除染を加速して放射能廃棄物を増やしてしまうのは、愚策ではないだろうか?)


2012年10月17日水曜日

"Level A+/A"のセシウム汚染地帯:伊達市(福島県)のセシウム汚染

夏休みの間、日本各地の土壌を採集した。知人に頼んで持って来てもらったものある。東北、関東、東海、北陸、甲信、近畿、九州とかなり広い範囲からサンプルが集まった。検体ひとつにつき、おおよそ20分の測定時間がかかるので、これら全ての検体のγ線スペクトルを調べるまでにはまだ時間がかかるが、10月も半ばになり、少しずつ結果がまとまり出してきたので、ここにメモしておこう。

今回は「レベルA」と私が勝手に呼んでいる高濃度汚染地域について。

まずは、福島県伊達市のとある民家の庭先の土の結果から見て見よう。伊達市は福島市の北に位置する。その北にある国見峠を越えたらもう宮城(白石市)だ。昨年の東北遠征では、高速道路を走りながらこの付近の線量測定を行い、国見峠を境に急速に線量が福島側で高くなるという結果を得た。ただし、東北道は国見町は通過しているものの、伊達市はその東に数キロほど外れているので、直接の測定をしたわけではない。

この民家の庭は除染をしていない。原発事故の時からそのままだそうだ。その結果は次のようになった。
γ線スペクトル:伊達市(福島)の土壌
今までのスペクトルに比べ、セシウム134のピークが減衰していることにまず気付く。セシウム134の半減期はおよそ2年で、事故から19ヶ月が経った。19/24〜0.8、つまり半減期の80%の時間が過ぎたことになる。したがって、残っているセシウム134の量は最初の量の(1/2)0.8〜0.6、つまり60%ということになる。福島原発の事故の場合、セシウム137と134はほぼ同じピーク高を示していたから、真ん中のセシウム137のピークに比べ、セシウム134のピーク(左のピーク)は60%にまで理論的には下がっていることになる。測定結果にはそれほどまでの減衰は見られないが、セシウム134のピークの低下は明らかだ。

また放射能の強度としては、およそ3000 Bq/kgという参考値がでた。しかし、CPSのスケールが2倍で収まっているのは意外だった。この辺りはもう少し汚染が強いだろうと予想していたが、いい意味で裏切られた。実際、福島市の南にある本宮市の土壌のスペクトルは4倍スケールとなり、スペクトルの高さを比較すると、伊達よりもかなり高いセシウム汚染があることがわかる。この結果は、福島原発から流れ出た放射能プルームの本体(濃度の濃い部分)は、北方よりも、南の方角に流れたことを支持している。

本宮と同じレベルの汚染が確認できたのは、今までに、御代田(信州)の森泉山と松戸(千葉)だけだ。この3地点は"Level A+"と分類することにした。その汚染度合いはおおよそ5000 Bq/kg程度と定義している。

LB2045では、森泉山は10,500 Bq/kg程度、松戸は4,500 Bq/g程度、本宮は4,700 Bq/kg程度と計算され、あたかも森泉山は別格の汚染が進んでいるように見える。しかし、スペクトルを重ねて見ると三者ともに同じような分布になっていたので、今では「ベクレル」で判断するよりは、「レベル」で理解した方がより正確ではないかと感じている。(Bq/kgも一応オーダーでは正しいと思うので「参考値」として使うことにはするが、所詮はLB2045の積分ソフトのアルゴリズムに依存してしまうので、プログラムの詳細/中身を確認するまでは、どの程度信頼できる数字なのかは慎重に対処すべきだろう。)

今回の伊達市の土壌は「Level A」に相当する。いままでに、これに相当する汚染が見つかったのは、東大本郷の時計台前の土だ。(スペクトルを重ねて見ると、本郷の方が伊達よりも汚染が少し強い。LB2045では2000 Bq/kgと計算されたが、スケールは2倍で出て来たから、伊達と同じだ。つまり、本郷はLevel A、すなわち2000から3000 Bq/kg級の汚染があるとみなせる。ただ、注意すべきはCs-134の半減期が2年だということだ。半年ほどまえに測定した本郷の土に対し、最近測定した伊達の土はCs-134の崩壊に伴う放射能の減衰が起きている。スペクトルを見ても、伊達のサンプルではCs-134のピークは、Cs-137のそれに比べて明らかに低い。したがって、より正確な結論を得るためには、本郷の土を再度測定する必要があるだろう。)

ここまでの結果をまとめると次のようになる。
Level A+とLevel Aの比較。
レベルAに関してみると、東京のど真ん中(本郷)が、福島の北部と同じ程度の汚染があるということは驚きだ。また、レベルA+に関しては、福島の中央部と関東のホットスポット(松戸)が、やはり同程度にあるというのが驚きだ。さらに驚くのは、原発から300キロを越える場所にある軽井沢付近のホットスポット(森泉山)が、福島中部や松戸などの最悪レベルの汚染地帯と同程度のセシウム汚染を見せている点だ。

福島原発の汚染は福島だけに留まらず、東日本の広い範囲で高いセシウム汚染を引き起こしている。首都圏はもちろん、首都圏のお金持ちが集う信州の高級避暑地も、福島並みに汚染されている。この事実はあまり広く認識されていないように感じる。

2012年10月9日火曜日

秋の葉山

久しぶりに海に行った。最近の調査の結果、千葉よりは神奈川の方がセシウム汚染が低いらしい感触を得ていたので、鎌倉周辺の海辺にいこうと考えた。ただ、連休の最中に鎌倉にいっても、渋滞にハマって消耗するのがオチなので、少し場所をずらして葉山にいくことにした。それでも逗葉新道は渋滞がひどく、随分とのろのろ運転を課せられた。とはいえ、海岸についたら風景の素晴らしさに運転疲れもふっとんだ。

港北からは見えなかった富士の頂が雲の上に浮かんでいた。視線を右にずらすと、水平線の上に江ノ島が見えた。見事だ。

雲の上に富士の嶺

水平線の右端に江ノ島


暑くなく、寒くなく、まさに快適な秋の祝日だった。人出もそれほど多くなく、気持ちよく砂浜を歩くことができた。

線量計(DoseRAE2)を見ると、なんと車内で0.03μSv/h!関東で最低レベルの線量ではないだろうか?弁当に鱒寿司を買って来て、それを陽光の下でたいらげる。おいしい。波打ち際でも線量を測ってみたが、0.04μSv/hだった。ここは本当に素晴らしい場所だと思った。

波打ち際の砂の上では、だいたい0.04μSv/h。
この場所の砂は一応採集して、ベクミルで測定してみるつもり。
ただ、横浜横須賀道路のある山間部に戻るとあっという間に0.07μSv/h程度まで線量は上がってしまった。(東京西部だと0.08-1.00μSv/hあるから、それよりはましだが。)やはり、セシウム汚染は三浦半島にも及んでいる可能性は捨てきれない。葉山の海岸部だけがギリギリ難を切り抜けたのかもしれない。それとも、砂にはセシウムが沈着しにくいだけなのかもしれない。詳細はこれからの調査であきらかになるだろう。

2012年10月1日月曜日

夏雲の下は、いつのまにか秋色

中央道を走り、茅野へ抜けてみた。尖石の近くに風除松という並木がある。江戸の昔より続く太い松が八ヶ岳の片斜面に伸びる様は、青空によく映える。

遠く山並みをよく見れば、いつの間にやら紅葉の気配あり。しかし、その上にかかる雲は雷雲なり。東京は10月になっても夕立の豪雨きて、先日などは三浦半島で土砂崩れ起きて、線路を寸断す。この時期に蒸し暑い日があるなど、信じられぬことなり。
夏雲の下の八ヶ岳は、秋色がいつのまにか深まっていた。
尖石を越えてしばらくいった森の中にある紅茶屋にいってみた。クリームティーがあったので、頼んでみた。まさか日本でこれが頼めるとは思わなかった。さらに、紅茶はなんとYorkshire tea!英国のスーパーで売ってる廉価版のお徳用紅茶だ。まさか、このお茶を気取ってすすることになるとは思わなかった。また、ポットでserveしてくれるのに、二人でshareしてはいけないとかいろいろ面倒くさい。卵料理が美味しそうだったので話をきいてみると、当初は清里の卵を使っていたのだが、美味しくないので、最近千葉産の卵に変更したという。せっかく信州のきれいな森の中にあるのに、千葉の食材を運んで来ているとはがっくり。