2012年12月24日月曜日

印旛沼周辺のセシウム汚染

8000 Bq/kgを超える高い放射能をもつ焼却灰が、手賀沼にある千葉県の下水処理場に運ばれることになったが、その背景にあるのが周辺地域に広がる「ホットスポット」だ。昨年の福島原発の事故によって飛散した放射能物質(死の灰)は、降雨によって柏や松戸周辺をひどく汚染してしまった。その汚染は福島周辺なみの非常に強い放射能汚染であり、人の立ち入りが禁止された場所も発生したほどだ。これだけ、大地が死の灰によって汚染されたら、草木や落葉の汚染も相当なものとなるはず。にもかかわらず、それを行政は焼却してしまった。焼却による濃縮効果によって、その焼却灰は手に負えないほどの放射能を帯びた。手賀沼の下水処理場に運び込まれているのは、このようにして「作ってしまった」放射能物質なのである。

柏や松戸がホットスポットであることはよく知られているが、その隣りにある印西市が「汚染状況重点調査地域」に指定されていることはあまり知られていない。これは、死の灰による汚染により、年間の線量が1ミリシーベルトを超えてしまった地域だ。線量計が0.23μSv/h以上の値を示す場所と言い換えてもよい。

印西市は印旛沼や手賀沼周辺の農地の土壌調査を行い、その結果を公表している。手賀沼周辺には500-900 Bq/kg程度のセシウム汚染があることは前に書いた。一方、印旛沼周辺は手賀沼よりも低めの、300-700 Bq/kgの汚染があると報告されている。協力者が持って来てくれた印旛沼畔の土を測定してみたが318 Bq/kgという結果となり、おおよそ印西市の調査通りとなり、少し安心していた。この協力者によれば、調査地点での線量は0.14μSv/hだったという(DoseRAE2による測定)。「汚染状況重点調査地域」としては「低い」(もともとこの地域の自然放射線は0.04μSv/h程度だったことを思えば、3.5倍も「強い」わけだが)。

ところが、そこからわずか数キロ離れた場所で採集したという土を測定してみて仰天した。その放射能が、13,000 Bq/kg (!!!)を示したからだ。1万ベクレル/キロを超えたのは、軽井沢の近くにある森泉山(御代田町)以来のことだが、この千葉の汚染土壌は森泉山の汚染10500Bq/kgを軽々と超え、今までの中で最高の汚染値を記録してしまった。福島北部の伊達市が3000-5000Bq/kg、福島南部の本宮市が4000-5000 Bq/kgの汚染であることを考えれば、放射能汚染は東北だけでなく、関東でも非常に深刻であることがわかる。
印旛沼の近くで採集した土壌が
1万3千ベクレル/キロを示した。
後でこの場所の線量を測定してもらったら、0.32μSv/h(JB4020 + RAMI解析)を示したというから、ここはたしかに「汚染状況重点調査地域」だ。事故から1年半ほど経過しており、セシウム134の崩壊により線量は若干減少しているはずだ。とすると、ここは事故直後はかなりの放射能汚染があったと推測される。

現地の写真をみると、どうやら農業地帯に点在する丘状の小山のようだ。(調査/採集はこの山の頂上で行ったという。)
1万3千ベクレル/キロ、0.32μSv/hを記録した
印西市のとある地点の様子。
この小山は神社として祀られているようで、人気はなく、木に覆われて薄暗い感じ。山頂は森の中のような状況だ。印西市はこの周辺の農地の土壌汚染の程度を調査しているが、農地は耕したり、水を流したりして、この地に降り注いだセシウムが移動している可能性がある。しかし、このような森の土壌は汚染当初の状況をよく保存していると見られるから、印西市一帯がいったんは1万3千ベクレル/キロ級にセシウム汚染されたとみてよいだろう。(セシウムが雨水などによって、水路や雨どい、あるいは河川の河原などに集積し、2次的なホットスポットを形成してしまう事例はよくあるが、この場所は丘の頂上だ。「上」から流れてきたセシウムが溜まることはないはずだ。)

柏や松戸の隣りにあるとはいえ、印西市がこのレベルの汚染を示しているということは、ホットスポットの中心には想像もつかない程の強い汚染が広がっている可能性があると、今更ながら驚愕してしまった。

たとえ、農地の除染が行われても、このような森が「セシウム貯蔵所」となって大雨が降る毎に除染された農地に流れ下る可能性があることは否定できないし、さらにこのような1万ベクレル/キロ以上の高レベルの放射能を帯びた汚染土壌はやたらには処分できない。それを手賀沼の終末処理場に運び出したら、あっというまに敷地は汚染泥によって埋め尽くされ、焼却灰を「仮置」するどころではなくなってしまうだろう。(もはや、この場所を行政に通報したとしても、除染はできないということだ。)似たような丘や小山はこの地域には無数にあり、調査を広げれば同様な汚染がたくさんみつかるだろう。東京電力と政府はこの責任をとるべきだと思う。

そういえば、今日はクリスマスイブだった...今年こそ神に心から祈るべき。「日本に未来がありますように」と。

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