2012年10月17日水曜日

"Level A+/A"のセシウム汚染地帯:伊達市(福島県)のセシウム汚染

夏休みの間、日本各地の土壌を採集した。知人に頼んで持って来てもらったものある。東北、関東、東海、北陸、甲信、近畿、九州とかなり広い範囲からサンプルが集まった。検体ひとつにつき、おおよそ20分の測定時間がかかるので、これら全ての検体のγ線スペクトルを調べるまでにはまだ時間がかかるが、10月も半ばになり、少しずつ結果がまとまり出してきたので、ここにメモしておこう。

今回は「レベルA」と私が勝手に呼んでいる高濃度汚染地域について。

まずは、福島県伊達市のとある民家の庭先の土の結果から見て見よう。伊達市は福島市の北に位置する。その北にある国見峠を越えたらもう宮城(白石市)だ。昨年の東北遠征では、高速道路を走りながらこの付近の線量測定を行い、国見峠を境に急速に線量が福島側で高くなるという結果を得た。ただし、東北道は国見町は通過しているものの、伊達市はその東に数キロほど外れているので、直接の測定をしたわけではない。

この民家の庭は除染をしていない。原発事故の時からそのままだそうだ。その結果は次のようになった。
γ線スペクトル:伊達市(福島)の土壌
今までのスペクトルに比べ、セシウム134のピークが減衰していることにまず気付く。セシウム134の半減期はおよそ2年で、事故から19ヶ月が経った。19/24〜0.8、つまり半減期の80%の時間が過ぎたことになる。したがって、残っているセシウム134の量は最初の量の(1/2)0.8〜0.6、つまり60%ということになる。福島原発の事故の場合、セシウム137と134はほぼ同じピーク高を示していたから、真ん中のセシウム137のピークに比べ、セシウム134のピーク(左のピーク)は60%にまで理論的には下がっていることになる。測定結果にはそれほどまでの減衰は見られないが、セシウム134のピークの低下は明らかだ。

また放射能の強度としては、およそ3000 Bq/kgという参考値がでた。しかし、CPSのスケールが2倍で収まっているのは意外だった。この辺りはもう少し汚染が強いだろうと予想していたが、いい意味で裏切られた。実際、福島市の南にある本宮市の土壌のスペクトルは4倍スケールとなり、スペクトルの高さを比較すると、伊達よりもかなり高いセシウム汚染があることがわかる。この結果は、福島原発から流れ出た放射能プルームの本体(濃度の濃い部分)は、北方よりも、南の方角に流れたことを支持している。

本宮と同じレベルの汚染が確認できたのは、今までに、御代田(信州)の森泉山と松戸(千葉)だけだ。この3地点は"Level A+"と分類することにした。その汚染度合いはおおよそ5000 Bq/kg程度と定義している。

LB2045では、森泉山は10,500 Bq/kg程度、松戸は4,500 Bq/g程度、本宮は4,700 Bq/kg程度と計算され、あたかも森泉山は別格の汚染が進んでいるように見える。しかし、スペクトルを重ねて見ると三者ともに同じような分布になっていたので、今では「ベクレル」で判断するよりは、「レベル」で理解した方がより正確ではないかと感じている。(Bq/kgも一応オーダーでは正しいと思うので「参考値」として使うことにはするが、所詮はLB2045の積分ソフトのアルゴリズムに依存してしまうので、プログラムの詳細/中身を確認するまでは、どの程度信頼できる数字なのかは慎重に対処すべきだろう。)

今回の伊達市の土壌は「Level A」に相当する。いままでに、これに相当する汚染が見つかったのは、東大本郷の時計台前の土だ。(スペクトルを重ねて見ると、本郷の方が伊達よりも汚染が少し強い。LB2045では2000 Bq/kgと計算されたが、スケールは2倍で出て来たから、伊達と同じだ。つまり、本郷はLevel A、すなわち2000から3000 Bq/kg級の汚染があるとみなせる。ただ、注意すべきはCs-134の半減期が2年だということだ。半年ほどまえに測定した本郷の土に対し、最近測定した伊達の土はCs-134の崩壊に伴う放射能の減衰が起きている。スペクトルを見ても、伊達のサンプルではCs-134のピークは、Cs-137のそれに比べて明らかに低い。したがって、より正確な結論を得るためには、本郷の土を再度測定する必要があるだろう。)

ここまでの結果をまとめると次のようになる。
Level A+とLevel Aの比較。
レベルAに関してみると、東京のど真ん中(本郷)が、福島の北部と同じ程度の汚染があるということは驚きだ。また、レベルA+に関しては、福島の中央部と関東のホットスポット(松戸)が、やはり同程度にあるというのが驚きだ。さらに驚くのは、原発から300キロを越える場所にある軽井沢付近のホットスポット(森泉山)が、福島中部や松戸などの最悪レベルの汚染地帯と同程度のセシウム汚染を見せている点だ。

福島原発の汚染は福島だけに留まらず、東日本の広い範囲で高いセシウム汚染を引き起こしている。首都圏はもちろん、首都圏のお金持ちが集う信州の高級避暑地も、福島並みに汚染されている。この事実はあまり広く認識されていないように感じる。

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