2012年9月22日土曜日

干し椎茸の放射能汚染

東京新聞でしばらく前に報道されていたが、新潟県で販売されていた干椎茸が放射性セシウムで激しく汚染されていたという。この件はあまり報道されていない気がする。

新潟に住む市民が店頭で購入した製品を自主検査した結果、汚染が判明した。今月中旬(9/15頃)に新潟県による公式測定がなされ、1100Bq/kgという桁外れの放射能汚染が確認された。

調べると、この干し椎茸は、岩手県産の椎茸を、静岡の食品会社が加工して出荷した製品だった。今年の冬、この食品会社は横浜でも同じ製品を販売したが、2077Bq/kgの汚染が発覚してしまった。横浜市や神奈川の保健所からの販売停止、製品回収命令を受けたこの会社は、命令を無視し、嘘を突き通して、今月に至るまでの半年間、場所を変えて同じ製品を売り続けていたことになる。食品工場のある静岡の保健所は、この間、この干し椎茸に検査合格とのお墨付きを与えていたというから、なにやらうさん臭いものを感じる。(報道では、検査が不十分だった、と書かれているが、婉曲表現であろう。)

「お上」のいうことが信用ならない、という事例がまたひとつ増えた。放射能汚染された食品を避けるためには、自分で自分の身を守るしかないらしい。

これも熱力学の第二法則に従っているのだろう。すなわち、日本にまき散らされた「死の灰」は、薄まりながら拡散の一途をたどっている。しかも、人為が絡んでいるから、物理法則による拡散速度よりもずっと速いスピードで、食品汚染は進んでいる。

食品汚染は内部被曝の問題だ。外部被曝と混同するべからず。この違いは電磁気で習ったガウスの法則に似ている。つまり、電荷を包んだ領域で体積積分するか、それとも包まない領域で体積積分するかによって、雲泥の差が出るということだ。「包む」というトポロジー的な事実が、内部被曝では大きく響いてくる。包まれてしまった物体は、包みを「よけて」進むことは絶対に出来ないのだ。さらに細胞や核膜のように、「包み」が小さければ小さい程(同じ立体角を覆う表面積は小さくなるから)放射線が傷付ける箇所はダブってくる。似たような箇所で内部被曝によって繰り返される組織や遺伝子の破壊の修正がついに失敗したとき、その部分は「自分」ではなくなり、「悪魔」と化す。すなわち、増殖し、自らを喰い尽くして自滅する癌細胞となるというわけだ。

これに加えて、食品による内部被曝で嫌なのは「低線量の被曝」だという点だ。強い被曝だったら、組織は完全に破壊され、焼き尽くされて死滅するから、代謝する方向に生体システムは働く。つまり、壊れた組織を除去し、新しい組織と入れ替える。たしかに、これはエネルギーを消費し、体力が消耗するから、決して体にはプラスではないが、怪我をしたのと同じように、休養と栄養を摂れば、回復できる。

しかし、中途半端に破壊された組織は、免疫によって異物と見なされないから、そのまま居座り続ける。遺伝子を中途半端に破壊された場合、それは「まだ使える部品」と見なされてしまう。この「弱く壊れた」生体部品は、細胞分裂するという点において、弱く壊れた機械部品と決定的に異なる。遺伝情報をもとに生体物質を合成したり、細胞分裂する際に「品質」が悪化したり、別の「部品」に化けてしまうからだ。

もっとマクロなレベルにおいても同様の効果は起きる。食品の汚染が薄らいでくると、警戒心は落ちてくる。「安心して」たくさんたべるようになったとき、今回のような1000ベクレル/キロ級の汚染物質も平気で食べてしまう確率も高くなるだろう。また、薄い汚染だとしても積分すれば(トータルでみれば)総量は増えてしまう可能性もある。そんな状態が30年も続いた時、取り返しのつかない結末がやってくるに違いない。

大きなニュースにならなかった新潟の干し椎茸のセシウム汚染。「がっつり」食べた人たちは決して少なくないはず。注意が薄れ、慣れてしまい、繰り返して薄い汚染物質を摂取し続ける状況をさけねばなるまい。





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