2012年6月30日土曜日

「内部被曝の真実」を読む:トロトラストとは何か?

内部被曝の真実 (児玉龍彦 著)幻冬社新書228(2012年9月初版)

児玉氏の有名な国会演説を文書化したもの。加えて、補足などが付け足されている。役に立つのは、第二部、第三部、そして第四部。

まず、第二部で登場した「トロトラスト」について。これは肝臓に蓄積し、発ガンを促すとある。ヨウ素は甲状腺、セシウムは膀胱と続いて説明がある。

トロトラストについてネットサーチをかけてみた。原子力関係の政府機関のホームページに、こんな記事があった。それによると、これは二酸化トリウムのコロイドのことだという。

トリウム(Th)というのは放射能を持つ重元素でα線を放出する。Th-232は天然に豊富に存在する。その半減期は140億年超。ただ、トリウムは中性子を吸収して、ウラン233(U-233)になることができる。U-233は天然には存在しないが、連鎖反応を起こすことができるので、ウラン235の代替核燃料として有望視された/されている。

トリウムは重元素でX線の透過を弱めるため、X線撮影の造影剤として利用されたことがある。それが二酸化トリウムのコロイド、すなわちトロトラストだ。ドイツの医薬会社が1929年に開発した。撮影したい患部に注射などによって埋め込む。

トリウムはα線源だから当然内部被曝の影響は大きい。発明から20年ほど経った頃、ようやく問題が指摘された。肝臓や精巣に沈着してしまうとほとんど排出されることはないことも判明した。長期に渡る内部被曝の結果、肝臓がんや白血病が生じる。精巣に沈着した場合は、DNAを傷つけるため子孫に遺伝障害を残す可能性も議論されている(が、その性質上、結論は数百年後にならないと出ないだろう)。

体内に注入後、どの程度の期間を経て発症、死亡するかというデータはグラフにまとめられている。
http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/09/09030111/06.gifより。
やはり内部被曝というのは半世紀ほどかけて、じわじわ人間の健康を害するのだな、と感じた。さらに、その間に遺伝子の伝搬、つまり子供が生まれてしまうと、その子供達は遺伝障害を引き継いでしまい、100年単位で影響が広がるおそれがあるという恐怖。自分の祖父や祖母が、昭和の初期にトロトラストを注入されて検査されたならば、その影響が知らないうちに、自分の両親を通じて、自分自身の体の中に埋め込まれていることになる。「遺伝子が傷つく」ということの恐ろしさを感じた。

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