2011年8月27日土曜日

内部被曝の調査:(3)基準値目一杯食べたらどうなるか?

現在3500Bqの放射能を内部被曝している人がいた、という報道が最近あった。この事実を参考に、食物摂取によるセシウム137の内部被曝の影響について考えてみたい。

まず、3500Bqの内部被曝を現在被っているということは、現在セシウム137が体の中に入り込んでいるということを意味し、その原因はおそらく、放射性プルームを吸い込んでしまったことだろうと思われる。このプルームの中には、セシウム137とほぼ同量のヨウ素131も含まれていたはずで、それ相応の量のヨウ素131をも吸い込んでしまったということになるだろう。先の計算の結果、ベント時に吸い込んだと思われるヨウ素131の量はおおよそ5×1012個であることが分かった。この量が、チェルノブイリ事故と同じ水準だと仮定すれば、これから10年の内に甲状腺癌にかかる子供が数千人単位で現れることになる。

ヨウ素131にせよ、セシウム137にせよ、ベータ線とガンマ線を放出してDNAを傷つけるという意味では、その内部被曝における役割はほぼ同じで、放射線をたくさん受ければ受ける程、発ガン率は上がるはずだ。ただし、セシウム137は半減期が長いので、ヨウ素131に比べて大量に摂取しなければ、一定時間に出てくる放射線の量は少ないから、比較的「害がないように見える」。(そういうことを強調して、セシウム137を危険視しない専門家も結構いる。)

また、セシウム137に汚染された食物を何十年も食べ続けた場合の影響についても前に議論した

今回は、暫定基準値とされる値まで目一杯汚染された食べ物を食べた場合について考察する。暫定基準値は次のようになっている:水、牛乳はそれぞれ200Bq/Kg、野菜、肉類、穀類はそれぞれ500Bq/Kg。

さて、宮沢賢治のアメニモマケズよりはいい暮らしをすると仮定して、一日に水3リットルと、200ccの牛乳、肉100gに、野菜200g、そしてご飯1合を食べるとする。それぞれが、600Bq、40Bq、50Bq、100Bq、そして75Bqとなる。合計で865Bq。少し、これより少なめにしてセシウム137を500Bq/日だけ摂取するとする。これは、7×1011個のセシウムを毎日摂取することに相当する。(福島に住むとある人が吸い込んだ)プルーム中のヨウ素131の14%に相当する。これはかなり多量だと思われる。

以前の計算を利用すると、この調子で食べ続けていくと、3年足らずで(プルームを吸い込んだときの)ヨウ素131の影響と、同程度の内部被曝量に追いついてしまう。そして、10年経つと400%近くにまで到達する。つまり、政府の基準値を守った農産物、水産物、飲料水を食べ続けていると、プルームを通じてヨウ素131を吸い込んだ場合に比べて、4倍のリスクがあるということだ。(なおこの計算では、セシウム137の崩壊に伴って、食物中のセシウム137が年々減少する効果は取り込んである。)暫定基準値は、したがって、1年程度で撤廃する必要があると思われる。

上の結果は、水3リットルから来る600Bqが主な原因だ。現在東京の水はというと1Bq/Kg未満だから、これを3Bqに変更してみよう。すると268Bqとなる。だいたい250Bqということだから、半分のn0/N0=7%となる。それでも5年でヨウ素131のリスクに追いついてしまう。10年だとヨウ素131の場合の2倍のリスク。30年で6倍だ。ということで、実質的には水の汚染が解消されていることから、他の食品に関してだけ暫定基準値を当てはめる場合は、せいぜい2年程度で暫定基準値を改める必要があるだろう。(それでもかなりの内部被曝、だいたい40%のリスクに相当、をしてしまう。)

ここで、WHOの基準値に変更してみよう。だいたい日本の暫定基準値の1/50くらいに設定されている。(飲みものは1/200)上の試算では250Bqだったから、その1/50というと5Bq/日となる。これだとヨウ素131のリスクと同程度になるまでに30年ちょっとかかるから、中年以降の人間には影響が出難くなってくるだろう。(もちろん、少年以下の世代には大きなリスクになるが。)そして、このWHO値はまさに、前に私が仮定したn0/N0=1%のラインに匹敵する基準値になっている。(それでもまだ安全とは言い切れないが。)

結論はこうだ。暫定基準値ぎりぎりで出荷されているものはかなり危険だ。高齢者だとしても、なるべく避けた方がよいだろう。どうしてもというなら、せいぜい一年程度なら食べ続けてもいいかもしれないが、かなりのリスクを負うのは確実だ。暫定基準値がWHO値に変更されるまでは、「放射能入り」食材は極力避けるべきだろう。

仮に、あの日福島の人々が吸い込んだヨウ素131の量が、チェルノブイリ周辺で被曝した人たちと同じ程度だったとすると、ベラルーシと同じ規模の都市の場合、10年間で400人程度の小児甲状腺がん患者が発生するはずだ。セシウム137の影響は出ていないという報告もあるが、それはソ連が食品基準値を厳しく決めたからかもしれない。日本のような甘い基準値のまま行くと、ヨウ素の影響に遅れること数年、たとえば今から15年後あたりから日本人全体の癌罹患率が上がり始めるだろう。そしてそれは、若年性の癌の増加(甲状腺に限らない)という形で最初に顕在化すると思われる。そのときは、同じ数の成人もセシウム137で癌を発症しているということになる。

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