2011年8月12日金曜日

ロンドンの暴動のきっかけ:投石した少女とそれを殴った警官たち

ロンドンの暴動は、南部のCroydonにまで広がったとか。Croydonにある、IKEAやOffice Depot、それに中華スーパーWing Yipなどにはよく買い物にいったし、Home office(内政局?)には永住権の申請や面接にも行った。友人たち(イギリス人も日本人も)も住んでいるので、遊びにいったこともある。確かに、ここは治安が悪めだ。特にダウンタウンはちょっと怖い感じがある。暴動が飛び火しても不思議じゃない。

さて、Tottenhamで起きた暴動のきっかけを書こうと思っていたのだが、忙しくてなかなか書けなかった。もちろん、根本の原因は、ギャングと警察の撃ち合いで巻き添えを食って殺された(とされる)黒人青年にある。

報道で言われているように、貧困層の不満が爆発したというのもあるだろうが、餓死するような貧しさじゃない。問題なのは、若者の精神の崩壊だと思う。イギリス人の倫理観の崩壊、家族の崩壊は深刻で、貧困層だけじゃなく、中流層でも起きている。スナック菓子で子供の夕食を準備し、自分はパブに飲みにいってしまう両親のニュース特集を見た記憶がある。また、子供たちに広がる麻薬、銃、そしてナイフの犯罪はロンドンで問題になっていたし、子供同士の殺人などもあった(結局、犯人はつかまらなかった)。

警察は、犯罪者と化した若者(ときには児童)を力で抑えようとしていたが、崩壊する精神は底抜けで、アブラムシを一匹一匹潰してはみるものの、結局はあきらめて大繁殖してしまう、といった感じだったと思う。組織的な検挙というより、気に食わないやつを見かけたら叩く、といった感じ。証拠集めが面倒だったり、証言が少ない事件を解決してやろう、という気力はあまり見受けられず、とにかく信頼できない。(長いこと捜査はやっているのだが、結局はあきらめてしまうので。)

やる気はないのに、いつもは威張っていて、それでいて気まぐれに強権を発動するときは徹底的に叩きのめすという、こういう警察に対する不満、反感、憎悪などは、若者を中心に広がっていたんだと思う。だから、今回の暴動のきっかけは、警察が黒人青年を射殺したことに対する抗議デモの最中に、16歳の少女が石のようなものを警察に投げつけたところから始まったんだろう。Teenagersの抑圧感はかなりあると思う。貧富の差が激しく、それが長く続いているので、なかなか自分の階級から這い出せず、あきらめてその階級内でまじめにやっていても、警察には理由もなく目の敵にされたりする。

同じくThe Guardianの記事によれば、この少女は投石した直後、スコットランドヤードの機動隊用の盾(riot shieldというらしい)や警棒で、ぼこぼこに殴られたという。殴った警官の数は15人ほどだったという。女の子は地面に倒れ伏したが、立ち上がろうとしたという。ところが、そこを目掛けて、さらに警官は殴りかかったという。ボコボコにやられる少女を仲間たちが引きずる形で助け出したところから、暴動は始まったという。

もちろん、いったん暴動が始まれば、政治的な問題と関係ないロクデナシたちが参加してきて、略奪ゲーム、放火ゲームなどに変貌していったんだろう。

そういえば、5年程前に、英国海峡で難破した貨物船から流れ出た貨物が海岸に流れ着き、付近の住民(老若男女を問わず....)によって略奪された事件があった。(このとき化石採集にいったら、アンモナイトの岩石の脇に、注射針や医療用具が無数に海岸に落ちていた。色んなものを運んでいたんだ....と思った。)若者がまずBMWバイクなどの大物を盗み、遅れてやって来たよぼよぼの爺さん婆さんたちは、食器などを盗んでいた。イギリスの人間は、都市/田舎、あるいは若者/老人を問わず、物質文明のせいで精神や文化が荒廃してしまっている。(もちろん、上流階級ではちゃんと「文化」や「伝統」は守られているが。)

今回のロンドンの暴動が特別なものだという感じはない。むしろ、BirminghamやCroydonなどに飛び火していったのを見れば、やっぱり至る所で精神や文化の荒廃が進んでいるんだ、という確認ができただけだ。

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