2011年3月28日月曜日

ウラン235の連鎖反応の物理(3:連鎖反応と原子爆弾)

たった一回でも多量のエネルギーを放出する核分裂反応だが、ねずみ算式に増える中性子をウラン235にぶつけ続けることで連鎖反応を引き起こせば、原子核から解放されるエネルギーは莫大で破壊的にすらなる。これが、ナイーブな原子爆弾のメカニズムである。(もちろん、全てのエネルギーが効率100%で爆弾の炸裂に寄与する訳ではない。また、実際の核爆弾がN=20段目まで到達しているかどうか、私は知らない。実際の原爆の中心温度は約6000度程度と言われている。これは太陽の表面温度と同じ!)

原爆を設計するときは、たとえばN=20に到達するまでは、なんとか核燃料が前段の爆発によって飛び散ることが無いように、しっかり押さえつけなくてはならない。この閉じ込めに関する設計は非常に難しく、ある複雑な数学の問題を解くことに帰結するところまでは詰めたものの、従来の理論の延長ではまったく歯がたたなかった。しかし、ナチス下のヨーロッパから米国に移住してきた天才数学者フォンノイマンによって、新しい理論が作られる。それを基に、難解な数値計算が行われ、ついに原爆の形状および圧縮爆薬の位置が決定された。原爆の最初の火は、それから間もなくして地球上で炸裂した。

人間に対し、原爆が実戦で使用された事例は歴史上、二回だけしかない。そして、その両方ともが日本人に対して使用された。しかも、その犠牲になった人々は、普通の民間人だった。戦争の結果やむをえず、というのではなく、新型兵器一発でどれだけ人を殺せるのか、アメリカは実験してみたかったのである。人体実験はナチスや旧日本軍だけがやったのではない。二回使用した理由は、片方がウラン235の連鎖反応を用いたタイプ(広島)であり、もう片方がプルトニウム239の連鎖反応を用いたタイプ(長崎)だったから、つまりどっちがすごいか比べてみたかったのである。

ちなみに、福島第一原発の3号機をのぞく原子炉ではウラン235(低濃縮ウラン)が燃料として用いられている。一方、3号機は、プルトニウム239、240など種々のプルトニウム同位体をウラン235(低濃縮ウラン)に「ブレンド」した燃料(MOX)を使っている。原発はあきらかに「原爆から派生した応用工学」だということがわかる。

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