2011年3月30日水曜日

福島原発におけるプルトニウムの漏出

昨日から「プルトニウムがついに環境中に出て来た」という報道ばかり。どの原子炉から出たかは分からないという。測定されたプルトニウムの放射能レベルは、アメリカ、ソ連、中国、フランスなどが行った核実験によって世界中にばらまかれたレベルと同じ程度だという。(この発表を信頼するためには、具体的な数値を教えてほしいものだ。)

福島第一原発の3号機は他の原子炉と違うところがある。それは、核燃料にMOXを混ぜている点だ。MOXはプルサーマル法という原子力発電法に使用される燃料で、意図的にプルトニウムがウランに混ぜてある。東電の公開データを用いてその重量を推算してみると、およそ30トンのプルトニウムが3号機にMOXとして入っている。

一方、3号機以外の原子炉の燃料はLEU、すなわち低濃縮ウラン。LEUの中身は4%弱のウラン235と96%程度のウラン238だ。最初はLEU燃料にプルトニウムは含まれていない。しかし、原子炉を運転するうちに、ウラン235の連鎖反応から出てくる高速中性子(速い中性子)が、ウラン238に吸収されることで、プルトニウム239を副産物として生成してしまう。核燃料はだいたい4年程度原子炉に入りっぱなしになっているが、「使用済み燃料」として取り出される頃になると、だいたい1%程度のプルトニウムが混じっていると言われている。

以前の計算でLEUに含まれるウラン235が4%だと見積もった。この値を用いると、だいたい60トンのウラン235があるだろうという試算となった。とすると、核燃料全体としては約1500トンの重量があるということになる。したがって、この場合、使用済み核燃料中のプルトニウムは15トンくらいになる。

東電のデータでみると、3号機の核燃料のうちMOXの割合は全体の1/17。とすると、16/17を占めるLEU中のプルトニウムの重量はだいたい14トン。よって、3号機には全部で45トン弱のプルトニウムがあると見積もれる。これは他の原子炉の3倍の量にあたる。

3号機では、先日作業員が溜まり水に濡れたことで大量被ばくした。このことから、核燃料が原子炉から外界へ漏れだしているのは確実となった。MOXを使用しているこの原子炉からプルトニウムが漏れだしている可能性は非常に高い。また3号機の使用済み燃料プールには、結構フレッシュな「使用済み燃料」が保管されていて、プールの水が干上がったときに、部分融解してしまった可能性がある。また水素爆発した際、プールを覆うコンクリート建物が吹き飛んでしまった。(4号機のプールにも、使用済み燃料があって部分融解している。)1号機のタービン下の溜まり水も強い放射能を持つことが測定されていて、同じように核燃料が漏れだしているらしい。2号機はサプレッションプールが損傷していると考えられ、原子炉自体に穴が開いている。1、2、3、4号機のどれからもプルトニウムが出ている可能性がある。

これをふまえれば、東電の「どこからでているかわからない」という説明は科学的ではないと思う。もちろん推測の範疇からは抜け出せないが、論理的な推論をもとに会見を行うなら「1、2、3、4号機のすべてからプルトニウムが漏れている可能性が高い。4号機からの放出は少ないかもしれないが、3号機にはMOXのせいでプルトニウムの量が多く、漏れだす量も他の原子炉より多いと思われる」と説明すべきだ。現場のことはよくわからないが、もし1、2号機よりも優先して、3号機の復旧を目指せと、東電の上層部が命じているならば、彼らは何が起きているかよくわかっている、ということになる。

追記:原子力保安院によると、今回検出されたのはプルトニウム238、239,240だという。報道によると、238があることで原発から漏れたことが明らかになったのだという。連鎖反応の燃料として使うのは239だから、238や240の割合が多い場合はMOXから漏れているとはいいきれない。原子炉内におけるこれらの同位体の割合について調べる必要が出て来た。

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