2011年3月28日月曜日

ウラン235の連鎖反応の物理(1:原子核と放射能)

さて、今までもしきりに登場してきた「中性子」だが、連鎖反応ではとりわけ大事となる。まずは「中性子」と原子核の関係を「おさらい」する。一番ナイーブな原子核のイメージは「陽子と中性子の集まり」である。例えば、ヘリウムは、陽子2個と中性子2個の、合計4つの粒子の集まりと見なせる。U-235の場合は、陽子92個と中性子143個の集合ということになる。つまり、中性子は、原子核の構成粒子のひとつ、ということ。

湯川秀樹(日本人として最初のノーベル賞を受賞)が解明した「核力(強い相互作用)」によって、これらの粒子は束縛され、一つの系(核)を形成している。南部陽一郎(米国に帰化してしまったものの、「日本出身者」として2008年にノーベル物理学賞を受賞)が気づいた不思議な理由(自発的対称性の破れ)により、核力はその有効距離が小さい。このため、原子核が大きくなりすぎると、ぽろぽろと端っこにある粒子がこぼれ落ちてしまう。これが、いちばん単純な「放射能」のイメージだ。当然、こぼれ落ちた粒子が「放射線」となる。

実は「こぼれ落ちる」というのはあまり良い比喩ではない。というのは(鉄より重い重元素の場合)、その質量エネルギーの一部を「溢れた」粒子の運動エネルギーに転換するからだ。この転換を表す式が(有名な)アインシュタインのE=mc2だ。これにより、放射線は巨大なエネルギーを持つこととなる。連鎖反応で必須となる中性子線もこうして発生する。

準備はこのくらいにして、連鎖反応の議論に入ろう。

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